15年前の僕らは幻想をもってオザケンなんて聴いてた

最近、基本的に「ジャズ・リマスター地獄」に陥ってるのだが(そのうちここでネタにする予定)、そんななか何となく思い付きで、オザケンの初期のアルバム&シングルを中古でごそっと買ってきて(某オクで大量落札)聴いてる。
いまちょうど『LIFE』が鳴っているのだが、もうノスタルジー(あるいは胸キュン)炸裂でこりゃまずいわ。
この頃(もう15年くらい前かしらん)に良く聞いてた音楽って、ジャンル問わず、友達からCDを借りてきて(あと公立図書館で借りまくったりして)うちで得意気に(笑)DATに落として聞いてたんで、ほとんどCD持ってないんだよね。
かつDATの本体はいつぞやの(たしか嫁さんと同居する時の)引越の際に捨てたので、オザケンにしても、もう十年以上聞いてないんだよな。
そういえば、DATのテープ自体はちっこいので全部ダンボールにつっこんで今も(今の)部屋にあるのだけど(他のものを探していて間違えて開けちゃうことを除くと)開ける機会なし。つーかDATどうなったんだよ? このダンボールどうしてくれるんだよ? この件について誰か(どこぞの電機メーカーのトップとか)責任取ったか?
そんなわけで、いまさら中古で、しかもわざわざ初版のCD(オザケンの初期の作品はリイシューされているのだが)を買うという、完全にここ十年のメディアの進歩(そんなの無かったというのがむしろポイントなのだが)を無視する愚行に出た始末。
いま聴き直して、一言でいえば、いやー、いい時代だったなと(笑)。
『LIFE』にしても、ブラックミュージックの影響がどうとか、ブラス(スカパラ)の導入がオサレとか、スチャダラとの共演(ラップへの接近)がクールとか、音作りに明確な意味というか参照点というか、(今との対比で)もっと言えば「幻想」があった。もちろんオザケンは当時からすでに特殊な(一般化不可能な)位置づけにあったわけだけど。一々鼻につく、彼のあの「余裕」感にも、幻想(「この人は本当はもっと別のスゴイことがやりたいんだろうな」的な)がたっぷり入り込む余地があった(今ならネット上でボコボコ叩かれるんだろーな)。あと今調べたら、オザケン、この『LIFE』の曲で翌年、紅白出てるんだよね。オレ当時テレビで見た記憶ないけど、○○が紅白に出た、とか、出ない、ということがなにがしかの「幻想」を伴っていた(最後の?)時代だったのではなかろうか(あれっ、中島みゆきが出たのはその後か?)。
(もっとも、音楽におけるそうした「幻想」を根こそぎぶっ壊したのが、他ならぬシブヤ系の人達だった、というのがオレ史観なので、その意味ではそいつらの親玉としてのオザケン本人にも責任の一端、どころか発端があるかも。この辺りの自己嘲笑的というか自己否定的な身振り、彼はやっぱりウマイ、というかズルイよね、ということを今さらここで確認しても仕方ないが。)
そういえば、オレの生も幻想に満ち満ちて、活き活きとしてたよ(笑)。オレもあの頃が一番頭が冴えてて一番本が読めて一番遊べて一番酒呑めて一番モテて一番○○してた時代だったよなー、と、うだつの上がらない中年男のノスタルジーに限界や節操はないのだった。あっ、そう考えたら、先ほどのDATも当時の一つの「幻想」だった(「CDよりも高音質で云々、音楽のプロたるや云々」)ということでFAか。
ところで、『LIFE』の「愛し愛されて生きるのさ」という曲に「10年前の僕らは胸をいためて「いとしのエリー」なんて聴いてた」という歌詞がある(さっき初めて気付いたのだが、エリーの「リー」のところが「変な巻き舌」になってて、めちゃウケる)。当時オレは「またまたオザケンったら、うまいんだからー、オレはまさしく10年前に「エリー」聴いてたけど、あんたはサザンなんて絶対バカにして聴いてなかったでしょー」と突っ込みたかったのだが、今回別の意味でこの歌詞が胸に染みた。そして思わず「10年前の僕らは幻想をもってオザケンなんて聴いてた」と(入れ子構造的に)言い直したくなった。正確には15年前だが、確かにそこには「幻想」があり、また「僕ら」というものが存在していた、そしてその限りで(のみ)「オザケン」も存在していたような気がするからだ(言うまでもなく、ここでの「オザケン」≠小沢健二である)。そしてそう言い直すことで、ついでに、オザケンがその後しばらく活動を休止(1998〜2002年)していたことの(大袈裟にではなく「世界史的」な)意味が少し分かった気になった。これは意外な発見だった。
つーか、オチがなくてわれながら相当恥ずかしいんですけど。
というわけで今夜も、オザケンから幻想を供給してもらって、日々の雑巾掛けに励みます。まずはオムツがようやく取れた上の娘を深夜に一度トイレに起こす(しばしば寝ぼけてDVを伴う)日課から始め、その後、思いのほか手こずっている論文書きへ。