昨日と今日
土曜日は美学会例会。場所は関西学院大学。普通なら行かずに家にいて原稿でも書いているのだろうが、司会を頼まれたので、仕方なく行く。場所は妻の実家のある甲東園。いつも家族で行っている駅に、仕事で一人で行くのは変な気分。駅前で一人でランチを取るのも変な気分。関学のキャンパスは、妻と二人で実家からサイクリングで行って以来、二度目。とても綺麗。日本の大学で一番といっていいくらいでは? こんなところに務めたら毎日気持ちいいだろうな、と思う反面、毎日教会にいる気分でちょっとイヤかも、とも思った。違う意味で毎日が日曜日気分になる。学内で酒も飲めないらしい。やはり日常生活の場は世俗的な方がいいわ。
例会は盛況。良い会でした。行ってよかった。吉岡洋さんの発表(美学会では十数年振りという)を聞きに来た人が多かったと思う。やっぱり有名な人は集客力がある。九州からはるばる来ていた人もいた。メディアの本質を親密性という観点から捉え直す、というもの。その前の陳貞竹さんの発表も面白かった。荻生徂徠の礼楽思想。美学会では珍しいテーマかもしれない。初めて聞く畑違いの人にも論点とオリジナリティが図式的に整理しやすい、好発表。発表後、私が司会をした懇話会。これは美学会でも関西支部に独特の慣習で、なかなか濃厚。司会は単なる交通整理では間が持たないので、けっこう頭と神経を使う。客観的にどう映ったかは分からないが、自分としてはもう少しうまくやりようがあった。喋らなくていいところで喋りすぎ、喋るべきところで喋れなかった。ネタも幾つか滑った。でも一応自分としてはフルスペックを発揮したので、許して下さい。こんなもんです。
終了後、まさかそこで会うとは思わなかった数人を交えてお茶をし、その後、委員会を終えて合流した年長者達と酒を呑む。駒場時代の後輩(人文学的メディア研究の第一人者)が四月から関西の大学に来るというニュースを聞き、喜ぶ。音楽学関係の親友も大阪の某音大に着任するし、オレの中では、2009年の関西若手研究者ネットワークはさらにアツイよ。とりあえず天満に呑みにいくよ。美学会の関西支部例会は、あまりこっちの人を知らない私でも顔を見知っている院生(京大、神戸大、阪大、同志社、立命館)がたくさん来ていて、東部会以上に、元気がある印象。ただし学会の仕事をふられると困るので、今後はあまり顔を出す予定はありません。予め宣言しておくと、某音楽系学会の委員の仕事が終わるまでは、他の学会の仕事は無理です、引き受けられません。人たるもの、一年間のうちの土日の日数は限られています。そういう「リスク」無しなら、顔くらいは出しますけど。
会場で「娘さんのクリスマス・プレゼントはやっぱりかぼちゃにしたんですか?」とこのブログを読んでいるという二名に聞かれた。
すっかり忘れていた。
そのうち一名には「ブログでは上の子の話題ばかりで、下の子の存在感がないですよ」と言われたので「すみません。どうしても第二子には親馬鹿熱が冷め気味でして」と答える。
もう一名には「クリスマスの報告を楽しみにしてたのですが、あまりにあっけなさすぎて」と言われたので「すみません。気が向いたときに書くだけなんで。これからもそんな調子ですが悪しからず」と答える。
で、今さらですが、上の子のプレゼントは無印良品の「City in the Bag」シリーズの「Kyoto」にしました。年末に無印のカタログを彼女に見せたらこれが載っており、彼女はそれを「ダイ」(大文字焼きのこと)と呼んでおり、ある時点から「サンタさんにはダイをもらう」と言い出したので、値段も1,000円ぐらいだし、ちょうどいいやと思ってこれにしました。ただ京都だと(東京だったらそうでもないのだろうが)超品薄で、河原町の店にはすでに在庫がなく、千本通りの店で(おそらく京都での最後の在庫を)取り置きしてもらい、ゲットしました。おまけとしてかぼちゃもあげましたけど。下の子は、プラスティック素材のシンプルな積木(中が空洞で、立方体や直方体のやつ)を探したのですが、われわれが子供の頃には普通にあったようなやつが無かったので、Miffyのブロックのセットにしました。目下、箱から全部出して、また箱に全部入れる、という商品開発者の意図をまるで無視した作業に御執心です。
明日(今日)は午前中に下の子の音楽教室の見学に行き、夕方から、スウィフト研究者で文芸批評家(群像新人賞)の武田将明(高校の同級生)が京都に来るというので、二人でしっぽり呑む予定。文系の大半が東京の大学を受験したうちの高校ではきわめて珍しく、彼はあえて京大を受験し、進学した。その縁で、私は東大の学生なのに何故か京大の学園祭(NF)の実行委員などもやった(あとケージの演奏会を企画・出演したことも今思い出した)わけだが、いまこうして京都にいるのも、自分のなかでは彼が作ってくれた縁の延長上にある気がならない。彼の部屋やサークル室(某学部地下)に一週間くらい寝泊まりして、やれゴダールだのフーコーだのと背伸びして言い合っていた日々は、もはや恥ずかしい青春的事柄だが、ただ不思議と今に直結している気がしてならない。浅田さんとの講演に呼んだ岡崎京子さん(事故に遭われる一年前だったか)とその妹とわれわれの四人で錦市場に行ったりもした。なので明日は彼に諸々、御礼を言おうと思っている。しかも彼は今では東京の大学に勤めており、立場がすっかり逆転しているのも因縁を感じる。高校時代に一緒にやっていた同人誌(彼の主幹)で、俺は当時フランス語はさっぱりだったが、彼と数人は確か『ミル・プラトー』の翻訳をやったりしてた。そんな絵に描いたような(リテラルに風貌も)インテリの彼と、将来同じ世界で仕事をするようになるとはまるで思わなかった。向こうは私以上にそう思ってるはずだ。昨日は遠くなりにけり。
今週は色々あってあまり家にいれなかったが、来週はできるだけ引き籠もって仕事をしたいですな。