DiGRA JAPANに行ってきた

土、日と芝浦工大で行われたDiGRA JAPAN(日本デジタルゲーム学会)に行ってきました。最初聞いたときは「なぬ、師走に学会?」と驚いたのですが、案外いいかも、12月下旬に学会の全国大会。だって今回のやつも10月や11月だったらまず行けなかったもん。この時期なら実はけっこう行ける気がする。他のことで忙しいとはいえ、土日は比較的空いてる気がする(他方10月、11月の土日は今年は公私諸々で全滅)。待てよ、ということは、新しい学会だから自ずとこの時期に決まった、この時期にしか開催できなかった、ということかもな。
訳あってどうしても朝イチのセッション(9:15〜)から出たかったのだが、それに間に合うためには(前泊しないなら)新幹線の始発(6:14)で京都を発つしかない、逆に言えば始発なら当日の朝発でオッケー、と判明。よし、だったらお父さん、もう俄然、始発で行っちゃうぞ、と決めたまでは良かったが、例によってだらしのないこのお父さんは、直前まで某原稿書き(今年最後の論文仕事が難航中)が終わらず、夜に大事な呑み会(某編集者たちと)が控えるにもかかわらず、一時間睡眠という強引なスケジュールで、五時半に家を出ましたとさ。いやー、こっちきてから初めて乗りましたよ、始発の新幹線。のぞみ200号ってヤツですよ。むろん座席に座った途端、品川まで意識不明の重体。ともかく遅刻(寝坊)せずに行けて良かった。
懇親会こそ失礼しましたが(夜は学会に劣らぬくらい重要な先約があったのです)それ以外は二日間、朝イチから閉会までフルに会場に張り付きました。こんなに真剣に一つの学会に臨んだのはいつ以来か(オイオイ)というくらい。どの発表も、どんなにディシプリンや専門用語が違っても、「分かる」んですよね。ああだからゲームって素晴らしい。それは私だけでなく、ある程度皆さん共通の印象ではなかったかな。あんなにディスカッションが盛り上がってたし。
で、私は非会員なので、質問とかしてあまりお邪魔しちゃいけないと(行く前は)思ってたのですが、やっぱり黙ってるのは無理な体質のようで(笑)のっけから色々言っちゃいました。そしたらその発表が終わった後、お二人が名刺を持っていらして「吉田さんですね、初めまして、お名前はかねがね」と。一人は文化庁のゲーム担当の方で、もう一人は記号学がご専門の大学教員の方。「オイオイ、非会員だというのに、オレも随分名前が売れてるなー」とか錯覚(←バカ)しそうになったが、話を聞くと、然るべき近隣筋(複数)から「指名手配」されていた模様(確かにオレ、この会に行くってこのブログにも書いたしな)。のっけから面食らいましたが、でもおかげさまで、非会員の学会(もっとも、立命館のゲーム関係者が教員も学生も総参加だったわけですが)でポツネンと寂しい思いをせずに済み、スムースに入っていけました。御挨拶いただきありがとうございました。たいへん嬉しかったです。それと、やはり質問はしてみるものですね。顔だけじゃ普通は誰だか分からないけど、名を名乗ると案外色々とつながったりするものです(これはレギュラーの学会でも言えることだけど)。発表終了後(発表者ではなく)質問者の方に関心を持って(あるいはディシプリンが近いとか共通の知人がいるとか分かって)話に来てくれる方も多いので、こちらからネットワーキングする手間も省けて、合理的。黙ってたら何も始まらない。まったく新参の場に久々に出たので、そういう基本的なことも再認識。こういうのは学生にも教えようっと。
あと国立国会図書館のゲーム担当の方々と名刺交換する際、向こうが「あれっ」と言ってきたので、よくお顔を拝見したら、何と東大時代の後輩(オレ助手、あちら四年生くらいの距離関係)。聞くに彼女は学部で美学を出て、修士で文化資源学に進み、その後、国会図書館に就職したとのこと。それにしてもここで会うとは。これもなんたる偶然。いつもながら世界は狭いなと(あちらはもっと驚いていた様子)。助手時代の後輩を見るまなざしが蘇ってきて、彼女の先輩(上司)を含む複数初対面同士の場で「でもいいところに就職できてホントに良かったねー、いやーホント、美学はさぁー(以下自粛)」などと思わず口走ってしまった次第(笑)。
DiGRA JAPANの年次大会(いわゆる全国大会的なもの)は今回が初めてのこと。これから毎年やるそうですが(来年は立命館?)。そう言う意味でも記念すべき会でした。
「産」はゲーム会社(大手から独立系まで)、「学」は(私みたいないわゆる人文系は少数みたい)人工知能研究、経済学、経営学社会学、教育学、アーカイブ研究、心理学、情報理工学、「官」は経産省文化庁国会図書館(よく知らないが一応「官」だろう)など、まさに「産学官」一体となった集まり(産3:学5:官2くらいの割合という印象)。皆さん(とくに「学」の人は)所属は様々ですが、それぞれの分野で(何らかの)マイノリティ意識を抱えておられるようで(とはいえ誤解が無いように言っておくと、皆さん、各分野でゲーム以外の仕事で(も)すでにエスタブリッシュされている方々です)とにかくゲームの研究をしたい、それが自分(のディシプリン)にとって(も)本質的に重要である、ゲームについて誰かと話したい、自分の話を聞いてもらいたい、反応が欲しい、仲間が欲しい、という熱気がムンムン。別の表現をすると、集まってる人の雰囲気なり男女比なり交わされる固有名詞がまさにコミケみたい、というと途端に褒めている感じがしなくなるのが不思議ですが(笑)、要は褒めてるんです、留保無しに、全力で。
まさにその場に集う必要性・必然性(のみ)があってそこに集っている、その話題を共有する&深めるためには、そこしか集うところがない、そんな集団。
ところがだんだん学会が「老化」していくと、どうしても当初の必要性・必然性、興奮が薄れてきて、目的(意識)が無いのに惰性で来ちゃうような人たちが増えてきて、私が知るどこぞの学会(複数)のように、発表が行われている最中に教室の外に出てサボってる(だべってる)人や、極端な場合は懇親会でしか見かけない人など、あんた何しに来てんの?という人が出てきちゃうんだよね、残念なことに。そうなるともはや何のための集まりだか分からなくなる。みんな仕方なくてやってる、実はそれが無くても誰も困らない、みたいな会になっちゃう。集まることが手段(ツール)じゃなくて(自己)目的になっちゃうと、やっぱりダメなんだろうな。やっぱり学会は「若い」うちが花だわ。組織(システム)になると弊害(必要悪)の部分が大きくなっていかんわ。組織というのはすべてそうだが、学会も「老化」したらスクラップ&ビルドが必要だよな、もっとも個人的には単に退会すれば済むだけか、などなど、あわせて考えさせられましたよ。
ともかく、久しぶりに「若い」学会に参加して、パワーをもらいました。研究発表の中味もエクセレントだったが、それに劣らず、いやそれ以上に、今回はその「若さ」が私にとって重要だったな。もらったパワーを今後の自分の仕事の燃料にして、恩返しせねば。
あと会場で多くの人がtwitterで発言することが予想できたので、情報がばらけないように初めから学会側でハッシュタグ(#DigraJ2010)を指定してあるの。なるほどそういう知恵があるのか、と。こういうのはうち(ってどこ?)でも取り入れるべきだな、と。さすがデジタルゲーム学会。何しろ、twitter上で現在ソーシャルゲームを開発中の作者が現状と課題をレポートする、という発表も今回あったくらいですからね。
いやー、それにしても大いに充実した、思い残すことのない二日間でした。えっ、そんなに褒めちぎる素晴らしい学会へのオマエの入会はまだかって? いや今回、まだまだ勉強不足だと痛感しましたので、もう修行を積んでからにしとうございます(笑)。それと会場で知ったのですが、来年は記号学会の全国大会もゲームがテーマだそうですね。で、まさか、そっちも、だから私に入れと?
あと今日学会の最中にいきなり電話が来て、来年六月に某西洋史系学会(これまた非会員)のシンポジウムに出ることに。出先だったんでろくにスケジュールも確認せずに(とくに学務関連は要注意なのだが)二つ返事で引き受けてしまった。帰宅して確認したら今のところ行けそう。場所は新潟(生まれてこの方行ったことがない県)。これは招待なので別に入会しなくてもいいみたい(笑)。詳細が決まったらまたご案内します。つーか、京都−新潟とか一般にどうやって行くのだろうか(って書いておくと次に会ったとき誰かが教えてくれるのでつい甘えちゃうダメな自分…)。