シネマ企画/Music and Philosophy

主催・立命館大学、配給・京都シネマで(それなりの人気・集客をもって)開催されている「シネマで学ぶ「人間と社会の現在」」という企画がありまして(サイトはココ)、そのシリーズ7(全三回)を私がまとめて担当することになりました。ゲストの人選や日程なども含め、ここ一週間くらいでバタバタと決定。

公開講座 シネマで学ぶ「人間と社会の現在」
シリーズ7「挑発する女たち──アートの臨界」

1月29日(土)「マリア・カラスの真実」
対談:吉田寛立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授)×松原洋子(同教授)
2月19日(土)「≒草間彌生〜わたし大好き〜」
対談:建畠晢国立国際美術館館長)×吉田寛
3月5日(土)「ファッションが教えてくれること」
対談:平芳裕子(神戸大学大学院人間発達環境学研究科専任講師)×吉田寛

主催:立命館大学人間科学研究所、立命館大学生存学研究センター
共催:京都シネマ
会場:立命館大学朱雀キャンパス5F大講義室
*いずれも13:00開場、13:30開演、16:30終了予定

格安で映画を上演した後、その映画をめぐって対談をし、その後お客さんも交えてロビーで交流会をする、という(学内業務にしては)多少優雅な企画。
三本のタイトルを選んだのは私ではありませんが、選ばれたタイトルを眺めて、私が対談者を決め、シリーズ名やコピーにも(無い)知恵を絞りました。ドキュメンタリー、アート、女性という共通点がある三本のフィルムなのですが、あまりジェンダー(論)みたいなものを前面に出してもつまらないので(というか私がそういう話に対応できないので)かなり悩みました。結局〈アート〉というシステムをクリティカルに揺さぶる存在として女性アーチストを捉え、かつそうした〈女性性〉の表象(の困難や限界)も同時に再検討する、という主旨で表記のようなテーマに。もちろんテーマや口上は単なる「ダシ」ですので、それとは別個に映画は(対談も)お楽しみいただけます。
草間の回は、国立国際美術館の館長で、国際的に名高いキュレーターでもあり、私が学部生時代(あるいは多摩美講師時代)からお世話になっている建畠晢さん。彼とは以前、大阪の某アートNPOの企画で美術館のあり方をめぐって対談をしたことがありますが(もう五年も前なんだな)一緒にお仕事をするのはそれ以来。最近ではすっかり偉くなられてしまい(ってお前こそエラソーに何者だ)少し緊張しちゃいます。
ファッション(『ヴォーグ』編集長のドキュメンタリー)の回は、私の駒場時代からの知人である表象文化論/ファッション研究者の平芳裕子さん。現在は神戸大学にいらっしゃいます。
いずれも、この上ない人選ができたと思います。どちらの方も、タイトルを見てすぐに「このテーマならこの人しかいない! しかもせっかくお互い関西にいるのだし!」と思い付き、突然(数年ぶりに)連絡したのですが、無事にご快諾をいただけて安堵と感謝。
それと最初の回は、私に「音楽学者としての責任を取れ」ということで(笑)、外からゲストを呼ばずに、今回の仕掛け人である同僚の松原さん(科学史)と二人でやります。謙遜とかじゃなくて、ホント、オペラは大の苦手なので、せいぜい頑張って予習します。これはオマケ(?)。
まだまだ先なので、スケジュールを押さえただけで中味は全然考えてませんが、草間の回には最近議論がかまびすしい「アウトサイダー・アート」について(も)考えてみたいと思っています。「アウトサイダー・アート」という概念はその反対物として「インサイダー・アート」を前提にしているように見えるが、しかし「インサイダー・アート」なるものは歴史上、一度として存在したためしはないだろう、だからそれを単に「アート」と呼んで何がいけないのか、というちょっとした批判めいた話です。天才/狂気の境目(その曖昧さ)を考える上で、女性という補助線はけっこう有効かなと。この文脈で草間がどう位置付けられるかはこれから考えますが。
でもよく考えたら、ワタクシ、映画(映像作品)を見てパブリックにコメントするような経験は(記憶する限り)初めてなのだが、大丈夫なのだろうか? しかも三回も。頼んだ方もリスクが高い選択だよな。まあ今回はどれも相手に恵まれてるので、聞き役に回れば安全だが(笑)。
企画の詳細はそのうちココに掲載されると思います。また直前にはプレス・リリースもしますが、近づいたらまたこのブログでもご案内します。通常の大学の企画と違って、「興行成績」も多少気にするらしいので、どなたかにビラ撒きなどにご協力いただくかも知れません。その折はよろしくお願いします。(立命館にしては)アクセスの良い、朱雀キャンパスでやりますので、関西方面の方はぜひぜひお越し下さい。そうだ、終わったらみんなでヒロに行って焼き肉でも喰おうか。というか朱雀キャンパスもヒロも、うちから徒歩十分圏内の地元なんですよね。
手帖をめくりめくり、もう来年のスケジュールが埋まり出す季節になったんだなあ、との感慨も少々。私はリフィル形式の手帖を使っているのですが、厚くなるのが嫌で、むこう三ヶ月分くらいしかページを入れていません。そのため(性格もあるけど)あまり先の予定には意識が向かないのですが、今回ページを足さざるを得なくなりました。そろそろ来年のカレンダーが店頭に並ぶ季節かしらん。
まったく話は変わって。
ニック・ザングウィル Nick Zangwillというイギリスの哲学者(イギリス人らしく、分析系の)がいて、私が本郷で助手をしてた時分に、彼がちょこちょこ東大に講演とか授業に来ていて、うちの研究室にも顔を出していたために知り合いになり、互いにペーパーを交換したりしたのだが(もっとも一緒にやったことと言えば、呑んで喰った記憶しかないが)、その彼が久しぶりに連絡を寄こし、イギリスの王立音楽協会 Royal Musical Association(イギリスで一番歴史があり大きな音楽学会)に「音楽と哲学研究部会 Music and Philosophy Study Group」というのを立ち上げるから、その advisory board に私に入ってくれと(立ち上がったばかりのサイトはココ)。聞いたら特に何もしなくて良いらしいので(笑)気軽にオッケーしたのですが、その後回ってきたメールをみて、そのすごいメンバーにべっくら仰天。

The board currently consists of:
Mark Evan Bonds
Andrew Bowie
Malcom Budd
Daniel Chua
Marcel Cobussen
Nicholas Cook
Steven Davies
Andreas Dorschel
Cynthia M Grund
Garry Hagberg
Björn Heile
Peter Kivy
Jerrold Levinson
Susan McClary
Max Paddison
Hiroshi Yoshida

何コレ? このインパクトって、音楽学業界の中の人にしか分からないだろうけど、マジでなぜゆえオレの名前が入ってるの?という感じ。世代的にも知名度的にも絶対おかしい。(まともな)音楽学者ならば、この人たちの主要な著作のタイトルはほぼ全て諳んじられるはず、という、それくらいのゴールデンメンバー。それに対してオレときたら、European languages によるペーパーは数本しかないし、本もないし。音楽学方面での欧語によるアウトプットをもっときちんと作らにゃいかんなと、遅まきながら思った次第。とりあえず来年七月に、ロンドン大学設立記念カンファレンスがあるらしいので、行って謝ってきます(笑)(そのためにも研究費取らなきゃいかんな)。
まあよく考えたら、この人たちと連絡手段ができただけで、今回は大収穫だな。
あと協会のサイトからリンクを張りたいので君の大学なり何なりのアドレス教えてくれと言われたのだが、よく考えたらオレ、自分の仕事などについて欧語で書いたサイトを持ってないんだよな(大学のサイトも日本語だけ)。ひとまず無視してあるが、どうしたもんかな。海外コネクション用に、まずは Facebook あたりから始めようと思っているが。海外への情報発信もしないとな。ノーベル美学賞のためにも(笑)。
で、一番肝心なことは、この Music and Philosophy Study Group に関心がある人がいたら、私にご連絡下さい。日本でのオルグが、adviser たる私に課せられたほぼ唯一の duty ですので。すでに直接声をおかけした人もいますが、海外(欧語)でのアウトプットの場を求めている方(所属、世代を問いませんが、とくにまだそういうコネクションを持っていない若い世代)にはちょうど良い話だと思います(そのうちジャーナルとかも作るはず)。「音楽と哲学」って言われてもピンと来ないかも知れませんが、設立大会のテーマは、
・music, meaning, and language
・perception and expression
・music and ethics
・music and ontology
・performance, authenticity, and interpretation
とのことですので、結構広いです。むろん発表希望者は(私を通さずとも)直接先方にアプライしてもらえれば大丈夫だと思います。発表申し込みのデッドラインは Monday 10, January, 2011 とのこと。
あと Nick に(半ば冗談で)次は東京じゃなくて日本の大学文化の中心地であるところの京都に来いと言ったら、来ると言ってたが、本当かな。本当ならどうしようかなこれ。ただの友人が来るわけじゃないんだから、一緒に呑んで終わり、じゃあまたね、というわけにいかんよな。
[2010.10.26追記]Advisory Boardについてのページができました。私が教えてないのに、立命館の教員プロフィールの英語版にリンクが張ってあった。というか、学内サイトの英語版ページがあったの知らなかった。