『ドラえもん』をインストール

いつのまにか世間的には夏休みが終わってしまったので、慌てて夏の諸々をご報告。
まず恥ずかしながらこの夏最大のイヴェントとして(うちの方言で呼ぶところの)出銭の国に行ってきました。旅行会社に足運んで予約とかして。新幹線で泊まりがけで。上の子は東京時代に二度ほど行っているので(かつその事実を妹に吹聴するので)もっぱらまだ行ったことがない下の子のためにと思って(というかそもそも一度も行かなくてよいと父は思うのだが)。最後の(?)一大親孝行だと思い、実家の両親も一緒に宿泊。その後、車で実家に帰省という流れ。祖父・祖母と孫が楽しむための、そして父・母は疲弊するだけのイヴェント。正直もう同じメンバーでは勘弁(笑)。
で、こちらはやることないから色々観察してて気付いたのだが、前回(三年ほど前)行ったときと比べて、園内での日本人の割合が明らかに少ない。逆に中国語を喋ってる人が明らかに多い。ホテルも然り。「○○様御一行御歓迎」というホテルの雰囲気に場違いな中国語の貼り紙がしてあるほど、露骨に「チャイナシフト」を敷いている。朝食の時に分かったのだが、ホテルでは従業員もだいたい中国語に対応できる模様。中国から来た人達は園内での買い物とかもマジでハンパない。うーん、国内の不景気もここまできたか、それでもって出銭の国周辺も新規に顧客開拓か、などと色々考えさせられる。たしかにオフィシャルホテルに宿泊して連日遊ぶと(さらに今回のうちみたいに複数世帯だと)国内から出掛ける場合でも、うん十万(大卒サラリーマンの初任給くらい)はかかる。まさに出銭の成せる業。こちらは、こんな親孝行も兼ねての家族サービスは一生に一度だと割り切っての出血大サービスだったが、普通に遊びに行く感覚では、きょうびの平均的日本人(当社比)には到底無理。
で、帰ってきて(休み前に残ってた)大学の会議に出ながら、そういえば大学も同じようなものだったとぼんやり考える。国を挙げて「グローバル30」とか言ってるが、実質これも完全にチャイナシフト。ただし、かの出銭の国と違うのは、大学ではこちらが中国語に対応しない(するつもりがない)点。出銭の国はあくまでも「コンテンツ」が魅力・目的であり、日本(浦安はいわずもがな)という「場所」に関心がなくとも客は来るだろう。別に彼ら彼女らは日本文化に触れにくるわけでもない。日本を通じてアメリカ文化に触れる、という要素はまだ少し残っているのかも知れないが、だったら香港かアメリカ本国の出銭園に行く方がマシなはず(現代中国人のビザ問題はどうなってるか知らんが)。一方大学はどうか。「コンテンツ」自体が目的ではなく、日本という場所にあるから日本の大学に来る、という中国人(に限らず留学生全般だが)がほとんどではないのか。だから大学側も、やはり日本語もできた方がいいですよ、日本文化にも触れた方がいいですよ、と文化的優位に立って「上から目線」で、彼ら彼女らに接することができる(できた)。欧米だけでなく、アジアからの留学生だって、所詮そう。日本語日本文化に関心がないやつが日本の大学に来るな、と。これまではそれで何とかやってきた。ところが今後、「コンテンツ」本位で真剣勝負しようとするなら、つまり日本にも日本文化にも関心のない中国人に、純粋に研究・技術目的で日本の大学に来てもらいたいと考えるなら、出銭の国と同様に、中国語対応しなくちゃダメだろうよ。英語? いやいや中国語でしょ。顧客のマジョリティのニーズに対応する、ビジネスの世界では当たり前の話ですよ。で、そんなことできませんよね。だったら、そもそもやめましょうよ、こんな話、と。「G30」の看板とか下ろしてしまえ、と。あっ、もしかして誰も本気でやろうとはしてないのかな、それとも現実を知らないだけかな。とりあえず出銭の国に行って現実を見てこい、夢から覚めてこい、と言いたい。
えーと、何だっけ、そうだ、夏休みの話でした。
で、出銭の国みたいなところに旅行に行っても疲れるだけで、しかもうち(というか、一家の主たる私)の主義や趣味にも合わないので、こんなんじゃいかんと、お盆明けに急遽「何もしないための旅行」を私が一方的に嫁さんに提案。研究室で仕事中に思い付き、その場でメールをやりとりして決定。旅行の性質上、場所は本当にどこでも良かったので、「京都+避暑地」などでテキトーにググって、「長浜」という、聞いたこともない場所に決定(あとで「そういえば『旅マン』のラストに出てきた」と思い出す)。宿も含めて(選択肢が異常に少ないから)ものの十分ほどで家族旅行の行き先決定。で、うちに帰ってから嫁さんと調べたら、海洋堂ミュージアムがあったり、来年の大河ドラマのロケ地だったりと、それなりに情報集積度が高いことが判明。「何もしないための旅行」という家長の主旨がちょっとぐらつくが、決めちゃったものは行かなきゃしょうがないので、それはそれで良しとした。で、四人で行きも帰りも電車(JR)で行ってきました。京都市内から一時間ちょっとで長浜駅に着くし、駅から街の中心部まで歩いてすぐだし、行きやすいっすよ、長浜。ああいう規模と雰囲気の、観光化がいい感じに遅れた、歴史的な町(城下町)って、東京近郊(関東)には無いなと思った。子供らにも好評だったのでまた行ってもいいかも。ただし来年は混みそうなのでパス。
大文字(五山送り火)は(去年は某所にお呼ばれだったので)今年は鴨川近辺に出掛けて見ようと計画していたのだが、とある事情から家を出るのが遅れて、十五分くらいの差でクライマックスを見逃す。消えかかり、かすかに見えるだけの「大」に目を凝らす、間抜けな四人組。古代エジプトでは北斗七星が兵士の目の検査に使われていたというエピソードが思い出された。河原町・鴨川まで地下鉄ですぐだと思って油断してた。まあ遅くまでスゴイ人だったが。
で、遅れた理由というのは、私と上の子が本屋に行っていて(長浜の直前だったので、滋賀の地図と)『ドラえもん』の単行本(ただし「てんとう虫コミックス」版)を探すのに手間取っていたから。『ドラえもん』(ただし「てんとう虫コミックス」版)なんて大きい本屋ならどこでも売ってるだろうと思っていたら案外そうでもなく、総集編みたいな分厚いやつしか置いてない店もけっこうあり、難儀する。
上の子(来年小学生)はひらがなとカタカナと簡単な漢字がだいたい読めるようになったから、これはもうマンガに行けるぞ、と前々から思っていたが、なかなか私が本屋でマンガ・コーナーに行く時間もなく、ようやく行けたのも、この夏休み。『ドラえもん』(ただし「てんとう虫コミックス」版)は漢字にもふりがなが振ってあることが判明したので(昔からかしら)これならうちの子でも(形式的には)問題なく読める。内容的には少し「高度」だが、それは何度も読んでもらって、分からない点は親に質問してもらえればよし。「子供が勝手にマンガを読めるようになったら親の教育は半分終了したようなもの」というのは私が作った格言だが、真剣にそう信じているので、上の子の、以後の情操教育および感情教育は、すべて藤子(ただし当面は「F」)不二雄先生におまかせします。
あとiPodを新調。今持ってるやつ(第二世代)に別に何の不満もなかったのだが、新しいnanoが発表されて、ホイールではなくタッチパネルに、しかも小さく(ちゃちく)なったのを見て、こりゃいかん、縦長nanoの歴史は終了だ、と慌てて現行機種をゲット。購入を思い付いてから丸一日後には、中味の音楽データ移行も完了。丸四年使った第二世代nanoよ、さよなら。今後は(やはり廃棄同然となる)専用の小型スピーカーと組み合わせて、限定されたレパートリー用としてお風呂などで余生を送る予定。しかし、私とApple社の関係はいつもこうだ。「何かが出た」から買うのではなく、「何かが無くなる」という理由で駆け込みで買う場合がほとんど。私のような完全に「後ろ向き」のエンド・ユーザーも、しっかり消費のサイクルに取り込む、ってさすがだね、Appleさん。でもさ、「何でもタッチパネル化」の方向はやっぱ世界史的に見て絶対間違ってるよ。
仕事方面ではほぼ二週間くらいを丸々かけて、音楽学の論文を一本書いてます(締切直前)。私にとって今年唯一のハードコア音楽学者としての仕事になる見込み(ビートルズ論は除く)。専門誌ではなく一般誌(その筋では日本一権威があるとされる某出版社の、これまたその筋では日本一権威があるとされる雑誌)に載せるものということもあり、いつになく難航しています。そう言えばこの雑誌の論文って、タイトルもたしか新聞に載ってるぞ、とか思うと、緊張しちゃう。ところでこの仕事、初めは(うちの方言では)「原稿」と呼ばれていたのですが、途中から「論文」に変わりました。考えてみれば分量も学会誌以上だし、「原稿」のように思い付いたことをチョイチョイというわけにはいかないので(つーか、お前のいう「原稿」とは一体何か?)。なおこの「論文」という語の用法は、例えば以下の通りです。A「おかえりなさい。今日、論文すすんだ?」、B「いや、あまり」。
ふと気が付くと、私の周りでいろいろ動いている、というか動き始めていますが、また私自身が動かさなくてはならないものが幾つかありますが、この「論文」が片付かないと。あと昨日、今年初めて「締切は年内」という文言にふれて、いよいよ「年内」なる時間感覚が起動しました。そうか「年内」かあ。書く方面はでかい順に、単行本一冊(昨年出したヴァーグナー論の続編)、デザイン関連論文一本(草稿は書けてる)、ゲーム関連座談会の活字化作業、話す方面ではゲーム関係のフォーラムが一つ(とても意外な、某国立大文学部系統からのオファー)、これがミニマムの課題かな。今思い出して並べただけなので、忘れてるものもありそうだが。あとはまあ、学内および学外で会議、打ち合わせ、密談(笑)が山ほどに。こういうのを「仕事」とは呼びたくないですが。
あと前回ここに書いたゲーム系論文の翻訳ですが、肝心の原稿がまだ送られて来ないのですよ。著者様がまだ書いている途中なんじゃないですか、いや私も人のこと言えんけど。こっちに来次第、連絡しますんで。>モリさん
そうそう、来週末は某会議で東京に行きますよ。