ホリエモンはなぜ今「不要」になったのか?

今回の捜査・逮捕劇で不可解なのは、なぜ今なのかという点である(少なくとも今日見たテレビではどの番組もそれを分析していなかった)。さらに言えば、今までホリエモンを泳がせていたのは誰で、それがどういう理由で今、彼を不要としたのか、ということでもある。
容疑の中味そのものはかなり前のもので、しかもそれが「違法」であることも周知であった。
すでにプロ野球の新規球団参入審査に落選したとき(2004年秋)に、(1)「時価総額」イコール企業価値という見せかけ、(2)「現金500億」は借入金を計上しない粉飾、(3)本業であるポータルサイトに実がない、という問題点が指摘されていた。
また有名な「ホリエモン錬金術」 サイト(http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu/)も今から一年前には立ち上がっていて、2005年3月の時点で「第8期と第9期の有報を私なりの方法で分析した限りでは、粉飾の疑いが極めて濃厚である」とまで書かれている。モロに今回の容疑の件である。なおこのサイトでは昨年七月から「刑事告発すべきだ」との声が出ていた。「証拠」は誰でも入手できたのである。
だからこそ納得できないのは、今回の逮捕までのタイムラグである。マスコミは、鬼の首を取ったように「悪人扱い」するのではなく、むしろ「どうして今まで彼が問題なしとされてきたのか」ということを国民に分かり易く説明することに力を注ぐべきだろう。
ここであえて「黒幕」はどこかを想像してみよう。明らかに現政権ではない。自民党でもない。財界(日経連)でもないだろう。今回の件で得をした人、という風に考えても、タナボタ野党の他には、ナベツネくらいしか思いつかない(笑)。
すると次に目を向けなければならないのは、東京地検特捜部それ自体の性格である。とくに政治的主体としての東京地検特捜部が「米保守本流の別働隊」とも呼ばれていることに注意しなくてはならない(さきに旧橋本派が壊滅させられた経緯を思い起こそう)。そう考えるならば、どうしてこの時期か、という問いには答えらしきものが見えてくる。ポスト小泉をめぐる政局である。
小泉政権の内部も一枚岩ではない。そして「米保守本流」ともっとも結びついている人物(閣僚)が誰かも明らかだ。今回の捜査がどうして監督官庁であるはずの金融庁の「頭越し」に行われたのか、という疑問にもこれで説明が付く。「彼」は小泉政権の中枢で構造改革を推進してきた第一人者でありながら、ホリエモンはもう泳がせる必要がなくなった、むしろネガティヴな影響力しかない、と見切ったのだ。おそらく昨年九月の衆議院選挙(この時点ではホリエモンは絶対必要なコマであった)と内閣改造が終わり、政局が一段落した頃から、今回のシナリオが立てられたのだろう。もし仮にこの想像が当たっているのなら、まことに見事な手腕である。表面的には彼は「被害者」にしか見えないのだから。
あらぬ推測を続けよう。次期政権をめぐる争いは、近いうちに(まずは水面下でだろうが)「本命」と彼(マスコミ的には超大穴?)との一騎打ちの様相を呈してくるだろう。そして戦局によっては、前者にスキャンダルの一つも提出されるだろう。もちろん他ならぬ東京地検によってである。図式的には分かり易いが、泥沼ですね、こりゃ。