新書版『世界の国歌の歴史』
といった本が検索しても出てこないのはどういうわけなのか?
今日『ベートーヴェンの第九交響曲―国歌の政治史』(E・ブッフ著)を読んでいて、ふとそう思った。あったらすぐにでも買って読みたいのだが。
上尾信也さんの『音楽のヨーロッパ史』には「国歌と国家」というチャプターがあるが、これを一冊に拡大したような本が欲しい。もちろんEU(ベートーヴェン第九)まで論じる必要があるし、日本で出るからには君が代問題にもふれるべきである、できれば他のアジア諸国の近代化の過程と比較しつつ。
まさに今、誰かが書いているのだろうか? あるいはすでに近い内容のものが出ているのかな? でも一冊と言わず、立場と専門を異にする人が書いたものが数冊あってもよい題材なのにね。
ちなみにこのブッフの著作は、イギリス(ゴッド・セイヴ・ザ・キング)、フランス(ラ・マルセイエーズ)、ドイツ(皇帝賛歌)については、私がこれまで読んだどの文献よりも詳細に、かつ相当踏み込んだ視点で書かれている。
ドイツ系のハノーヴァー朝がイギリスに誕生したために、ヘンデルがハンブルクからロンドンに呼ばれて重用された、という事実は音楽史的常識であるが、この「ドイツ語が喋れないイギリス王」とその作曲家ヘンデルに対抗するかたちで、旧来の典礼音楽をずらして《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》が作られた、という指摘は、きわめて興味深かった。《水上の音楽》と《ゴッド・セイヴ・ザ・キング》はいわば「図と地」の関係にあるのだ。
これは時期的な並行関係を考えれば当然あり得る視点だが、私の頭のなかで「音楽史年表」と「国歌年表」がシンクロしていなかった(そもそも後者を持ち合わせていなかった)ために、並行関係に今まで気づかなかったのだ。
そんな訳で、誰か早く『国歌の歴史』(年表付き)書かないかな。自分で調べた方が早かったりして。