メディア芸術部門会議(2月24〜25日、東京ミッドタウン)

平成23年度(第15回)文化庁メディア芸術祭の受賞作品が昨年12月に発表されました。明後日2月22日(水)からは国立新美術館で、受賞作品展が開かれます。前日の祝賀会&内覧会には参加できないため、私も会期が始まってから(大慌てで)見に行く予定です。
これにあわせて、2月24日(金)と25日(土)の二日間にわたり、「メディア芸術部門会議」が開催されます。この会議は昨年に引き続き、二度目の開催となりますが、今年のテーマは「地域活性と10年後のメディア芸術」です。
詳細はこのサイトにありますが、一日目(24日)にはメディアアート、アニメーション、マンガ、ゲームの四部門に分かれて、分野別会議を行い、二日目(25日)には前日の成果を踏まえて、二つのテーマ別会議「新たな才能を社会につなげる」「メディア芸術による地域文化の進化」と、シンポジウム「新たなメディア芸術への革新とコミュニティ形成」を行います。
私は、24日にはゲーム部門会議のモデレーターを務め、25日には最後のシンポジウムのパネリスト(兼モデレーター)を務めます。
ゲーム部門会議には、井上明人さん(国際大学GLOCOM研究員)、新清士さん(ゲームジャーナリスト)、堀浩信さん(福岡市経済振興局・コンテンツ産業担当)のお三方をお呼びしております。井上さんはご存じ、大ブレイク中の『ゲーミフィケーション』の著者の立場から、新さんはそのパワフルなフットワークで日本全国のゲーム系イベントを駆け回っている経験を活かして、そして堀さんは、日本国内でも他に類を見ない、ユニークなゲームの産学官連携機関「福岡ゲーム産業推進機構」を取り仕切っている現場の担当者として、それぞれプレゼンテーションをしていただく予定です。
また25日のシンポジウムは各部門会議のモデレーターが四人集まって行うのですが、どういうわけかそこでのモデレーター役も私が仰せ付かってしまいました。二日目はその場にいる(佇む)だけでいいだろうと気楽に構えていた(←それは言い過ぎ)のに、一転して何とも胃が痛い状況に。そもそも私は「メディアにもアートにも無知ですが、ゲームなら何とか」と半ば消極的に(昨年以来)メディア芸術祭に関わってきた身ですので、他の三つの分野に対する「横から」の言葉はもちろん、メディア芸術祭なるものについて「上から」語るような言葉を持っていません。従ってせいぜい、事前に(といってもあまり時間はありませんが)、そして二日間の会議を通じて、精一杯勉強させていただいて臨みたいと思っています。
私は今いつになく緊張していますが、それは与えられた任務の大きさももちろん関係しますが、両日ともいわゆる「プレゼンテーション」をしないことも理由だと思います。プレゼンテーションをするときは、誰でもそうだと思いますが、直前にはその準備で大わらわで「緊張」など感じる暇は微塵もありません。そして、もしもそのカンファレンスの場で、多少大きな視野での質問に答えるときも、自分のプレゼンテーションに引きつけて、その限定された立場から回答することができます。今回私はプレゼンテーションをしませんので、いわば「手ぶら」で会場に行くことになります。これはすなわち「立場」(依って立つ足場)がない、ということを意味します。「オマエ何やってるの? というかアンタ誰?」と問われても、その会議の中では私は「肩書き」以上のことは答えられません。これはきっと辛いです。それが私の緊張感をいっそう高めています。だからといって「プレゼンテーションをする方が楽、緊張しなくていい」という話でもないのですが、別種の緊張感、プレッシャーということなんだと思います。
今のところ、この会議に私個人は二つのテーマをもって臨もうと考えています。一つ目は「そもそも論」として「地域振興」がなぜ大事なのか、そしてこの言葉はそもそも何を指すのか、ということ。あるいは、何を持って地域の「振興」と(誰が)判断するのか。多少極端に言えば、経済産業省ならまだしも、文化庁が「地域振興」を言い出すことの意味が私には分かりません。いやもちろん昨今の「時勢」は理解しますが、わざわざ文化庁(周辺)が今このタイミングで、それを言い出すことの戦略性というか「意味」が分からないのです。二つ目は、かりに地域振興というテーマに「のる」として、ゲームがその中でどのような位置づけにあるのか。ゲームはどの程度「特殊」あるいは「一般的」なのか、メディアアートの今後を考える上での「モデル」になるのかならないのか、ということです。商業色が薄いメディアアートは言わずもがなですが、いわゆるサブカルチャーとして消費されているアニメやマンガと比べた場合でも、ゲームは「産業として成立・成功している」度合いがきわめて高いと言えます(この辺の「印象」も本当かどうか会議の場で検証したいですが)。教育との連携や地域経済の活性化、社会への技術的還元なども、ゲームはとてもやりやすいし、また現に実績もある。だがそれは単にゲームが「特殊」だからであり、ゲームがうまくいってるからといって、他の分野にもそれが真似できる、真似すべきである、という話ではなかろうと(いや、そもそもゲームはアートじゃないだろう、という「そもそも論」がここでも首をもたげますが…)。いやそんなこと皆さん重々ご承知かと思いますが、「地域振興」なるものが大上段に掲げられると、どのようなロジックが先に立つ(暴走する)か分かりませんので、私自身はゲーム部門を代表するからこそ、思考法や語り口に気を付けなくてはと思っています。というか本心を言えば、私は「産業」や「経済」の話をそもそもしたくないのですが、それは今回のテーマでは無理ですよね…。
と色々逡巡を書きましたが、基本的にはとてもワクワクする、楽しみなイベントです。当日は以下のサイトで中継も行われますので、遠隔地の方もどうぞご覧下さい。

文化庁メディア芸術祭特設サイト http://megei.jp/tv?locale=ja
文化庁メディア芸術祭USTREAM公式チャンネル http://www.ustream.tv/channel/bunka-jmaf

なおこのカンファレンスの「裏」で、日本デジタルゲーム学会DiGRA Japan)の大会が25〜26日に立命館大学で行われています。私は非会員ですが、立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)との共催セッションが26日午前にあり、そこにコメンテーターとして参加しますので、日曜日には京都に戻ります。京都で(も)お会いしましょう。