メディア芸術祭京都展のことなど

早いもので前回のエントリーから一ヶ月以上空いてしまいました。7月はエントリー皆無でした。最近私もご多分に漏れず「twitterで堕落」しているせいが大きいのですが、一ヶ月まったく更新しない、というのは実に久しぶり(初めて?)の気がします。
その間、博士論文の審査(主査初体験を含む)をしたり、学内の諸案件のために教授会や委員会で無い知恵を絞ったり、深夜の木屋町のバーで辻仁成さんと初めてお会いしたり、家族で沖縄に行って(子どもたちは初飛行機)恩納村で連日泳いで数年ぶりに日焼けで皮がズルむけになったりと、まあ要はこれといって人様に報告すべきことをほとんどしていなかった(とはいえtwitterでは随時さえずっているわけだから「堕落」としか言いようがない)わけですが、諸々(多少大袈裟にいえば、人生における)「フェイズ」が変わってきた感じがするので、そろそろ書いておかないと前後のつながりがつかなくだろう、と思って半分は自分用のメモ(記録)として書きます。
「文化庁メディア芸術祭 京都展」というのがあるそうで、昨年に引き続き今年も開催されるとのこと。不勉強にもその存在をつい先日知ったばかりなのですが、私も急遽プロジェクトチームに加わり、そのうちの「エンターテイメント部門」をお手伝いすることになりました(ちなみに他のメンバーは吉岡洋さん、小林昌廣さん、森脇清隆さん)。私はここ数年ゲームのことを調べたり話したり書いたりしてきたわけですが、それはどちらかと言えば感性学や認知科学の観点からであり、「エンターテイメント」という観点、いわんや「メディア芸術」という枠組みから考えてきたわけではないので、それをあらためて考える良い機会になるだろうと思っています(「フェイズが変わった」感があるのは一つにはこの辺り)。そして現在「エンターテイメントとしてのゲーム」を考えるならば、やはりソーシャルゲームやモバイルゲームの存在が圧倒的なので、どうしても(私が比較的苦手にする)社会的/経済的な話をしなくてはなりません。ゲームの場合、パッケージ作品を買うのと、課金ビジネスに金を取られる(あえてこう言いますが)のとでは大違いなわけですが、それは(私がこれまでやってきたような)単なる画面やユーザー経験の分析からは見えてきません。ですから、昨年の神戸大学のフォーラムや今年の記号学会のときとはまったく違う切り口になります。
またそうした「エンターテイメントとしてのゲーム」がいわゆる「メディア芸術」という枠にいかに適合・親和するか(しないか)という問題も、つねに念頭においておく必要があります。昨年度の「文化庁メディア芸術祭」のエンターテイメント部門の優秀賞にはゲーム作品として唯一『無限回廊 光と影の箱』が選ばれましたが、メディア芸術(祭)の歴史の中のゲームの位置づけということもこの機会に勉強しなくてはなりません。また「エンターテイメント部門」という括りで、ウェブや映像(MVやCM)やゲームが一緒くたに扱われることにも多少の違和感があります。商業的(広告的)なもの、大衆的なもの、付随的(他律的)なもの、それらをいわば「アートの外部(周縁領域)」として一緒くたに扱っているんだろうなーとは理解しますが、それで果たして良いのか、という疑問はありますし、それらを一括りにするにせよ、「エンターテイメント」という括りはあんまりだろう、と思ってしまいます。
現在絶賛企画・交渉中でして、そのうち公式発表があると思いますが、エンターテイメント部門は11月前半の週末(土日の二日間)に京都市内の美術関連施設で行われる予定です。二日間で展示企画(ワークショップ的なもの)とシンポジウムを一日ずつ行うのですが、その両方の企画を私が担当します。今回せっかく関わらせていただくからには、以上で書いたようなことも含めて、ゲーム/(メディア)アート/エンターテイメントの境界問題をその原理から考え直す、という視点を、展示企画の方にもシンポジウムの方にもぜひ入れたいなと思っています(また初発時点でこの辺りのブレーンストーミングを幾度かtwitter上でさせていただきました。ご協力いただいた方々には、御礼申し上げます)。
さて、以上のメディア芸術祭は、基本的に私が個人として「一人」で関わる(サポートスタッフには立命館の方々にも多数入っていただく予定ですが)ものですが、大学の方に目を移せば、私が事務局長になって設立した「立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)」の活動もぼちぼち動き始めています。まだ中味がスカスカですが、一応サイトもできました。「C」と「G」を電子回路上のスイッチの「オフ」と「オン」に見立てたロゴ(福田一史さん作成)もなかなかカッコイイので要注目。設立後これまで細々と例会を重ねてきましたが、この秋にはキックオフ・カンファレンスを多少「派手」にやります。それと、さっそく海外から客員研究員が数名来ることになっている(せっかく日本に来てもゲームを研究できるアカデミックな機関がない、というのが本センターを立ち上げる動機・意義でもありました)ので、学内外の研究機関やプロジェクトと共催で、グローバルな観点からのゲーム研究の視点も提示したいと考えています。この辺りも具体的に予定が決まり次第、随時(先のサイトで、またこのブログでも)ご案内します。
というわけで、なんだかゲームの話一色になってしまいました。実際、2011年度の後期は私にとってゲームづくしの半年になりそうです。実は今年の音楽学会の全国大会(@駒場)は、例年以上に面白いことになりそうな気配なのですが、先述のメディア芸術祭とちょうど重なって参加できない可能性が濃厚です。この手の「踏み絵」が最近私の周囲の随所に転がっていますので、「踏まれて」しまった方は何卒お許し下さい(笑)。その代わり(?)9月の音楽学会の関西支部例会では発表させていただく予定です(内容は今催促中で猛烈思案中)。それと12月の東京藝術大学音楽学部・研究科)での集中講義も純正音楽学者としての仕事ですね。そこではゲームの話はしませんので悪しからず(笑)。代わりにゲームの話は京都大学(人環)の集中講義でやります。今年度の後期は私としては非常に珍しく、本務校での講義ゼロ(ゼミのみ)なのですが、決してヒマなわけではありませんので念のため。というか、授業の準備がないからといって油断して夏休みをぼんやり過ごすなよという、自分への戒めであります。