『生存学』Vol. 4 発売!

『生存学』Vol. 4(生活書院)が刊行されました。書店やAmazon.co.jpで購入可能です。生活書院のサイトはココ
私は「生存のデザイン」という特集に「ユニヴァーサル・デザインはなぜそう呼ばれるか──再起動されたモダン・デザイン」という論文を寄稿している他、ファシリテーターを務めた座談会「〈老化〉するゲーム文化──ビデオゲームの三つのエイジングをめぐって」(上村雅之+河村吉章+サイトウ・アキヒロ+尾鼻崇+吉田寛)も収録されています。
2010年に私としては結構な労力・時間を割いた(とくに年末をつぶした)仕事なので、無事出版されて感慨もひとしお。ほっと一息。本当はもう少し早く日の目を見る予定でしたが、刊行スケジュールの関係(同誌のVol. 3が出たばかりなので)で、この時期にずれ込んだ格好です。
論文では、「ユニヴァーサル・デザイン」という「無敵」で「政治的に正しい」概念を、いかにして「裸の王様」にせずに、モダン・デザインにおけるユニヴァーサリズムの伝統(フォーディズムバウハウス、ミース・フェン・デル・ローエなど)ときちんと「対決」させるのか、その上でモダン・デザインの反復になるのをいかに避けるのか、ということを考えました。いわゆる「デザイン」の領域で論文を発表するのは私としては初めてでしたので、たいそう難産しました。ユニヴァーサル・デザインに関する文献は粗方渉猟していたのですが、そこでの論点を近現代デザイン史に接合するのに苦労しました。その「苦労」自体が論文のテーマになってるわけですが。ご意見・ご批判をいただければと思います。
また対談では、題名に「老化」とありますが、「老化=エイジング」には「慣らし、熟練、定着、安定」というポジティヴな意味もあるんだよ、その観点からビデオゲーム(テレビゲーム)を取り巻く最近の状況を見直してみようよ、というのがポイントです。元ナムコの社員で、現在横浜で「かいかや」というバンダイナムコグループ傘下のデイサービスセンターを経営する河村さんに、上村さんと私で昨年六月にお話を伺いに行ったところから着想・企画が生まれました。ちなみにここでの「三つの老化=エイジング」とは、技術の老化、企業(組織)の老化、人(作る側も、買う・遊ぶ側も)の老化です。高齢化社会を迎えたゲーム企業のこの先のマーケティング、日米のゲーム企業の体質の対比や良し悪し、介護・医療施設でのゲームの導入事例、ナムコの福祉事業部の歴史など、話題はきわめて多岐にわたっています。後はまあ、ぜひ買って読んで下さい(笑)。
なお本号の特集「生存のデザイン」は、私が一人で(対談+論文)やってるだけです(笑)。感性学者として、福祉や医療や障害といった問題群にいかに「介入」できるか、という実験だと思ってやらせていただきました(私は編集サイドではないので頼まれ仕事です)。でもアート・セラピーやアウトサイダー・アート、障害とアートなど、他にも(私には無理でも)私の周辺で同様に「介入」可能なテーマがあると思いますので、われこそはと思う人は、ぜひ「仲間」になって下さい。アート・セラピーとか基本的にうさんくさいと思ってる人は(私もその一人ですが)その「うさんくささ」をきちんと(歴史的/思想的に)記述するだけで、いい研究論文になると思いますので(笑)。私個人としても、そして『生存学』編集サイドでも、引き続き「仲間」を募集中です。