日本記号学会予告+RCGS定例研究会

明後日(15日)の日本記号学会での発表要旨は以下です。その後、書籍化するので論文として出すように言われているので、どうせなら今大体書いちゃおうと思い、珍しく「読み原稿をそのまま掲載するレジュメ」を作ることにしたのですが、先ほどようやく仕上がったところ。GWに遊びすぎたツケが予想通り回ってきた格好。

ビデオゲームの画面の独自性はどこまで記号学的方法によって定義・記述できるのか?」
 ビデオゲームの画面はコンピュータのGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)等と並び、「インターフェイス価値」(タークル 1995)が全面化した、新たな(「ポストモダン」な)文化的領域としてこれまで理解されてきた。事実、『ポン』(アタリ、1972年)に始まる商業用・家庭用ビデオゲームの画面と、『アルト』(ゼロックス、1973年)以後のグラフィカルなコンピュータのインターフェイスは、文化的にも技術的にも関わりが深く、ビデオゲームの画面をいわゆる「デスクトップ・メタファー」の類似物として捉えることも(ある程度までは)可能である。
 だがここで発表者は、ビデオゲームの独自性を感性学的に考察するプロジェクトの一環として、ビデオゲームの画面がいかに独自の文化的構成物であるかを記号学の術語・方法によって定義・説明したいと考える。すなわち、その独自性は(1)画面上のオブジェクトがアイコン(メタファー)/イメージの「二重性」をより積極的に引き受けること、(2)画面を構成する統語論的原理と意味論的原理の力関係が独特の様態を取ること、そして(3)「キャラクター」という語用論的原理がそこに介入していることの三点にある、というのが発表者の仮説である。

結局、モリス(1938)が提起した記号過程の三区分(統語論/意味論/語用論)をビデオゲームの画面の分析に導入したらどうなるか、という話がメインになります。前から気になっていた「アイコン/イメージ」の二重性の問題は今回勉強した限りの記号学ではうまく解決できなかったので、今後の課題です。ただしそれを統語論/意味論の区分にのせると比較的すんなりいく、というのは発見でした。東さんのサイバースペース論(1997-2001)の中に、ジジェク(1998)のタークル批判に対する反論があるのですが、それを私が記号学を使ってあらためて(多少エレガントに)整理したいと考えています。「語用論」でキャラクター云々というのは、本来私の関心に入っていませんでしたが、主催者側(松本さんと前川さん)と打ち合わせをしていたときに「で、語用論はどうなってるの?」と言われたので、無理矢理くっつけました(まあおしなべて無理矢理なのですが)。発表としての完成度よりも、議論への開かれ具合を優先した格好です。前日の香山さん達のパネルも、そういう話になりそうですので。もっとも私の場合、キャラクターと言っても、アイデンティティやコミュニティがどうこうとかいう「精神論」ではなく、「ゲーム酔い」を「記号学的」に説明するとか、そんな話ばかりですが(笑)。
それと、昨日はたまたま私が研究室にいる時間(ほとんど深夜)に、ゲームの研究会を終えた学生達と合流できたので、書きかけ(未完)のドラフトを聞いてもらい、意見をもらうことができました。教員の話は基本的にいつも(授業にせよ学会・研究会等での発表にせよ)「完成されたもの」なので、たまには「作業途中」のものを見せるのも教育上よろしかろうと思い、やってみましたが、それなりに楽しんでもらえたようです。もちろんこちらにとっても非常に有益でした。感謝。もっとも今考えれば、この人そんな直前になってバタバタと準備してるんだ…と思われることは、教育上よろしくなかったかも知れませんね(笑)。まあ「反面教師」ということで。
ちなみに「イメージ/アイコンの境界が揺らぐ例」(の一つ)として、『ドラゴンクエストIV』でマネマネが主人公達に化けるシーンというのを昨晩思い出して「ユリイカ!」だったのですが、どこを探しても動画が見つからず、自分で作成するのも手間なので、残念ながらお見せできません(笑)。動画でなく静止画ならあるのですが。どなたか提供してくれたら「研究上」たいへん助かります。マジで「謝金」をお支払いしてもいいレベルです(笑)。
さらにもう一つ。出来たてほやほや、立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)の第二回定例研究会が来週火曜日に開催されます。もうすぐサイトを作りますが、まだ学外に広報するルートがないので、ここで(半オフィシャルに)告知。この分野、派手なパフォーマンスよりも、読書会・文献調査みたいな地道な活動が「研究」として今は何より重要だと思ってやっています。ともかく「勉強」したい人、大歓迎です。

立命館大学ゲーム研究センター2011年度第二回定例研究会
日時:2011年5月17日(火)16:00〜17:30
場所:アート・リサーチセンター多目的室
ビデオゲーム関連研究文献調査講読会#01」
発表者:岡田翔・片山貴文(立命館大学映像学部・RGP)
※RGP(Ritsumeikan GameStudies Party)とは、主にゲームスタディーズの読書会を行っている、本学の学生・大学院生が主体の団体です。
発表内容:
(1)国内のビデオゲーム関連文献のマッピング
(2)文献紹介
(a)Jesper Juul「ゲーム、プレイヤ、ワールド:ゲームたらしめるものの核心を探る」(http://www.jesperjuul.net/text/gameplayerworld_jp/
(b)川島隆徳、村井源、往住彰文「ゲーム批評から見たゲームの「面白さ」、『デジタルゲーム学研究』4(1)、pp.69-80、2010
お問い合わせ先:尾鼻崇(bana@fc.ritsumei.ac.jp)