予防接種効果覿面

土曜辺りからひどく鼻水が出始め、この御時世なので念のためにと熱を計ったら、何と38度6分。
日頃熱など滅多に出ない(平熱=36度1分)ので、熱が出た感じという自覚症状が分からなかったのだが、こんな感じかと納得。
軽い筋肉痛も出てきたので、これは間違いなく例のアレだと思う。
そう言えば金曜日に新型インフルエンザの予防接種を夫婦で打ってきたばかりなのだが、これは効果が出るまでに数日かかるという。
ということは、効果が出る前に、タッチの差で感染してしまったということか。こんなことなら打たなかったのに、予防接種代(3,600円也)を返せー、と言いたくなる。
ともかく、私の家庭内隔離が決定し、始終マスク着用は言わずもがな、食事も自室で孤独に取ることに。考えてみたら、自室(書斎)で食事を取るのは、この家に住んで初めてかもしれない。いつもは食べ物や飲み物を持ち込まないようにしているので(理由は簡単で、こぼすと困るから)。
下の子だけ新型の予防接種がまだなので(基礎疾患の無い乳児は後回しというこのおかしな現実)、とにかく彼女には近づいてはならない。だがまだ状況認識ができない彼女は、父親に嫌われたと思い混んだか、ドアの向こうからパパー、パパーといつも以上に激しく泣き叫ぶのであった。短い期間とはいえ、これほど辛いことはない。
症状は鼻水と熱だけなので、起きておけないことはない。とはいえ、仕事はメールの読み書きくらいにして、後は基本的に布団の中で過ごす。眠くもないのに布団に入っているという状態も、子供の時分以来。ずっとビートルズを聴いていた。自分には音楽があって良かった、無かったら自分はどうやってこの時間を過ごすのだろう、などとも考えた。まあ高熱が出てるし、眠くないといっても、布団に入っていたらうとうとしてしまうもので、二日で40時間近く寝た。こんなに寝たのもいつ以来だろうか。
月曜は祭日なので急患(発熱専用外来)に行くという選択もあり得たが、まあ今すぐどうこうなる感じでもなかったので、翌日まで寝て待つことに。で、火曜の朝一番で病院に行き、事情を説明したら、かかりつけ医が開口一番。
「これはおそらく予防接種の効果が出ましたね。疑似感染状態です。本当の感染だったら、こんなものではありませんよ。せきもひどく、筋肉痛で動けないはずですから。」
なんと「予防接種にもかかわらず感染してしまった」のではなく「予防接種そのものによって感染した」のでありました。確かに軽い筋肉痛状態もあったし(だから普通の風邪ではなくて、絶対アレだと思い込んだのですが)本当の感染をスケールと時間を圧縮して体験(いや「疑似」体験でしょうか、よく分からなくなってくる)したようなものです。確かなのは、間違いなく予防接種のワクチンは「効いた」ということです。しかも厄介なのは(当然といえば当然ですが)こうした疑似感染と「本当の感染」を検査によって見分けることができないということです。職場にガイドラインがあるので「本当に新型に感染していないかどうか」を検査して下さい、といったところ、検査しても有意義な結果が得られないだろう、と断られてしまいました。疑似感染なら、このまま熱が引くだろうから、それを待つしかないとのこと。また疑似感染から人にうつることは無いから、仕事に行くことも家族との接触も問題ないとのこと(この点は本当の感染とは違うんですね)。
ちなみに私は、通常のインフルエンザの接種でこうした症状が出たことはありません。また、私と同じ日に新型の予防接種を受けた義理の母も、ちょうど同じ頃に高熱が出て、同じ頃に下がりました。そこから考えても、あまり知られていませんが結構ありうることだと思われますので、新型インフルエンザの予防接種を受ける皆さんは、知識として頭に入れておいてもいいかも知れません。
さて本ブログ、aesthetica sive critica としては、本日のテーマはもちろん、広義でのミメーシスの問題です。ミメーシスは単なる「真似」では済まない、ということです。そこには深刻かつ本質的なジレンマがある、ということです。プラトンにおけるミメーシスが時に(いみじくも)「感染的模倣」と訳されることも想起できます(彼は『イオン』で、神の狂気が詩人によって、さらに聴衆によって「模倣される=感染する」ことを磁石の比喩を用いて語っています)。