すでにやってる人には余計なお世話ですが…

研究者として大学・研究所・シンクタンク等に就職(転職)を予定・希望する人は、絶対、自分の仕事の概要をインターネット上で公開した方がいいです。
自作のサイトでも、ブログでも、とにかく、その人が何をやっているのかが名前を検索すればすぐに分かるなら、かたちは何でもいいと思います。
今は所属機関の側でやってくれる場合もありますが、そうでない場合にも、面倒くさがらずに自力でするべきです。大学院生や研究生の場合でしたら(教員も同じですが)自分の研究業績は、そのまま所属機関の業績にもなるので、双方にメリットがあります。
研究者(とくに駆け出しの)にとっては、自分がどんなことをやっているかを「世の中」(狭い意味でも広い意味でも)にアピールすることは、研究それ自体に劣らない重要性を持ちます。それは改めて言うまでもないでしょう。もちろん学会発表や論文出版といった日頃の活動もその一環であるわけですが、並行して、インターネットも使わなくては今の時代はきっと駄目だろう、という話です。ここ数年で急速にそうなってきました。そしてもちろんこれは、いわゆるネット有名人(文化人)になれ、と言うのとは全然別の話です。
以前、東さんが「インターネットの検索で出てこないってことは存在してないってことでしょ?」と言っていたのを思い出しましたが、一般論としては極論であっても、一人の研究者(一つの研究業績)にとっては本当に「インターネット上に存在しない=この世に存在しない」と言っていいかもしれません。少なくとも今の日本では、すごく重要な研究をしているにも関わらず、インターネット上の検索で出てこない研究者(研究業績)というのは所属機関や専門分野の別を問わず(政治的理由とかそういうのを除いては)皆無なのではないでしょうか。
いや、自分は世の中には背を向けて、百年後の読者のために仕事をするんだ!といくら意気込んで、優れた著作や論文を図書館の中に残したところで、検索システム(アナログだろうがデジタルだろうが)で引っかからなければ書いた意味がない、もっと言うとその研究(者)が歴史上存在した痕跡がない、というのと同じです。
学生の就職の世話というのは教員の大事な仕事の一つですが、自分でインターネット上で研究業績を公開することもせずに、就職の世話をして欲しいとか言われても、ちょっとやりにくいわけです。その人が何をしたいのか、どこまで本気なのか、むしろ疑わしくなります。論文も書かないで研究者になりたいと言っているのと同じくらいナンセンスに聞こえます。まずやれることは自分でやろうよ、と思ってしまいます。
あとプロジェクトや企画を立てるとき、こんな人にこんな仕事をやってもらおうかな、という漠然としたイメージを練る段階では、まずインターネットで検索して人材探しをする、という方法が一般的になってきています。これは大学のみならず、学会、企業、出版社、研究所、行政機関等、どこも同様なのではないかと想像します。一からインターネットというケースはまだ(そしてこれからも)少ないかも知れませんが、誰かから口コミで紹介してもらい、その後、自分達でインターネットで調べてみて、必要なら実際にアポイントを取る、という順序は常套的です。このときに、その人の業績一覧がインターネット上にあるのとないのとでは、話がまとまるまでにメールで二〜三往復程度、時間にして一週間程度は差が出るでしょう。先方が急いでいる場合にどっちが有利かは言うまでもありません。そして大抵の場合、先方は急いでいます。
今日そんな話題がたまたま身のまわりで出ていたのですが、そういえばここは若い研究者の人達もけっこう見てるよなと思い、書いておくことにしました。
すでにやってる人はたくさんいるわけですし、そういう人には余計なお世話でスミマセン。私自身も、所属機関のサイト以外は、このしょぼいブログだけなので、まだまだ大いに改善の余地ありなのですが。