Truth in Fantasy

10月12日(木)
 桐朋と聖心で講義。先週は休講にしてしまったから、前期以来、ほぼ三ヶ月くらいぶりの授業。桐朋では上尾さんに新著を頂く。
上尾信也『吟遊詩人』Truth in Fantasyシリーズ72、新紀元社、2006年
というものなのだが、これを読んで驚いた。RPGファンタジー小説向けの入門書を、現役ばりばりの中世史専門家が書いているのだ。
確かに現代の日本(元祖はアメリカだろうが)では「中世的なもの」はもっぱらゲーム的想像力とセットで消費されている。
ウルティマしかり、ドラゴンクエストしかり、である(ついでに言えば、ドラクエでは、すぎやまこういちの音楽によって中世的なものとバロック的なものが混じっているが)。
Truth in Fantasyシリーズといえば『魔法辞典』や『西洋神名辞典』が古典で、いわずとしれた幻想文学やゲームを作ろうとする人のバイブルである。それは知っていたが、こういう本を誰が執筆しているのか、今まで考えたことがなかった。確かに「吟遊詩人」であれば、上尾さん以上の適任者はいないと思うが、実際に書いちゃうのはすごい。しかも後書きではちゃんと、テレビゲームと中世史の関係に言及してあるし。しかし、今リストを見直してみても、いわゆる学者の方は他に一人も見あたらないんですが…。上尾さんの蛮勇力と実行力には脱帽。ちなみに「吟遊詩人」という訳語はファンタジーの文脈では定着しているけど、学問的には「宮廷詩人」という方が彼らの活動実態に近いらしいです。この辺もあとがきに書いてあります。
 仙川から広尾に移動する途中、渋谷駅前のバスロータリーで『Big Issue』を買おうと思ったら、いつも売っていたおじさんがいない。前期の間はほとんど毎号、木曜のこの時間にここで買っていたのに。それを広尾までのバスのなかで読む、ということまでルーチン化されていたのに。おじさん、夏のあいだにどこかに行ってしまったのだろうか…。困ったな。
 久しぶりの早上がりで、四時半には赤羽に帰宅。天気の良い木曜はホントに気分がいい。

10月13日(金)
 本郷。諸々の書類作りに追われる。予想していたことだが、学会や諸々の申請書類の締め切りがある十月は、助手にとって一年で一番やばい月だ。ゼミが終わった後、一人で仕事をしていたが、あっという間に深夜になり、久しぶりに終電で帰宅。実は娘がいつも遊んでいる子が高熱で昨日から入院中なので、こちらもつねに電話をもらったらすぐに帰宅できる態勢で、娘をいつでも病院に運べるよう心の準備をしていたが、夕方少し熱が出たもののすぐに下がったので病院はいかずにすんだ。忙しいときには迷惑をかけない、何とも親孝行な娘である。

10月14日(土)
 せっかくの秋晴れの週末なのに、部屋にこもって書類作り。部屋に入ってこようとする子供を外に追いやって篭もるのは苦痛だ。今日などは子供と遊んでいた方が、絶対、真であり善であり美なのにな。せっかく熱も下がったのだし。などと思っていたら、嫁さんから「あなたには最近、以前のようなストイックさがないわよ」と指摘されてしまう。確かにそうだ。なまじ忙しいのを言い訳に、仕事以外の時間はやりたい放題で、特定の目的達成のために何かを我慢するということをすっかり忘れてましたよ。反省、反省。あれをあれするまであれはあれしないと。でも、書類作りも終わったことだし、今宵は前に買ったままだったドラゴンズのDVDを見たいのですが、よろしいでしょうか。ああそうですか、今日はチャングムでしたか。