さらばクラシック

といっても音楽のことではありません(それならとっくに…?)。Macintosh Classic OS (9.2.2)のことです。
四年間使ったPowerBook G4(最後のOS9起動機種)に見切りをつけて、MacBookを購入したのは、これが使えなかったら、Macとは永久におさらばしよう、という決意と共でした。
だからあえて、未練がましくクラシック環境が入っていない、インテルMacを選んだわけです。
買ってからまだ四、五日ですが、十分メインの研究用マシンとして使えそうな気配です。
というより(後に述べる理由から)このタイミングでMacに乗り換えて良かったな、とすら思ってます。
そんなわけで私の場合、MacBook(初Intel Mac)の印象と、OS Xを初めてちゃんと使った印象がごっちゃになっているのですが、その見地から使い心地を書いてみます。

【メモリ】
まずメモリですが、最大の2GBまで増やしました。これでようやくまともに使えます。というより初期状態の512MBはほとんど「不良品」と呼んでいい代物です。価格を表面上抑えたいのは理解できますが、メモリ増設しないで使うであろうMac初心者ユーザーに悪い印象を与えることで、かえってMac離れを促すのではないかしら、と余計な心配をしてしまいます。
XではOS 9のときのようにそれぞれのアプリごとに使用量を指定できないので、「macmemXmonitor」などを使って、全体の動きを確認します。512MBの状態では常時半分(256MB)以上がactive、三分の一くらいがinactiveで、freeの領域は十分の一もありませんでした。なので頻繁にHDにメモリの中身を書き込みにいくために、常にHDが動いていて、それに伴ってファンが回ります。
2GBに増やした今では、activeとinactiveを足して全体の四割強で、残りの半分弱はfreeです(私の場合、常時立ち上げているのはブラウザ、エディタ、ワープロソフト、その他)。早いし、HDとファンが回らない分、静かです。

【キーボード】
実際に触らないで買ったのだが、MacBook Blackのキーボードは比較的当たりだった。その後、MacBookProを触ったが、キータッチは断然下。Proを買おうと思いつつ両方のキーボードタッチを触って比べた人は悩むだろうな。あと、この種のキーボード(何タイプというのかしらん)は、もともと学校用に開発されたもので、子供がキートップを剥がして口に入れない、という理念で作られたそうですが、うちも今ちょうど幼子がいるので、その意味でもちょうどいいかもしれません。

【ソフト】
・Nisus Writer Express(ワープロ):SoloWriterのころからメインのワープロとして使い込んできたが、Classic時代は最後まで不安定で有名なソフトだった。Intel(ユニヴァーサル)版はさすがに早いし安定している。ただ、保存形式がRTFなのは、時代の流れとはいえ、少し残念。OS 9時代のようにテクスト形式に毛が生えた程度の形式なら、そのまま他OSのエディタでも編集・検索ができて便利なのに。(Intel ネイティヴ対応)
Jedit v.4(エディタ):これはフリーウェア時代(v.2)のころから使ってるソフト。
とにかく私のような者は、原稿を書いていて日本語と外国語を瞬時に切り替える必要がある。日本語を打った後に、ウムラウトのついたドイツ語をいれる、ということがストレスなくできなくてはならない。シェーンベルク Sch?nberg、美学 ?sthetik、といった具合にだ。Windowsのエディタではどうやっても「スクリプトの切り替え」→「フォントの切り替え」をマウスでやらなくてはならなかった(特殊文字ATOKに記憶させるという裏技もあるが)。これがMacならコマンド+スペースと右の指二本でスクリプトを切り替えただけで、フォントも連動し、すぐにドイツ語を打てる体勢に入る(少なくともNisusやJeditでは。できないエディタもあるけど)。右手はずっとキーの上に置きっぱなしでいい。結局、今回私がMacに「帰ってきた」のはこの便利さが忘れられなかったからだ。
ところで、Intel対応の最新版はJedit Xだが、これにはv.4までにあった「スクリプトとフォントの同期」の設定項目がない。この点について私が作者にメールで問い合わせたところ、XはUnicodeの上で作られているため、スクリプトとフォントの同期はデフォルトでオンになっている、との返事を頂いた。なるほど、それはそうだ。でもそれなら代わりに、スクリプトごとのフォントの指定をエディタ側で行われるようにして欲しい。もう少しいろいろ試して調べてから、この機能がついたら直ちに購入するのですが、と作者に提案してみようかしら。
・Opal(アウトラインプロセッサ):Classic OS時代の伝説のソフトActaリバイバルさせるプロジェクト。なんとActaのファイルをそのままアウトライン形式で開けるから驚き。OS 9を離れるとき、念のため、過去のActaファイルをすべてtxtとpdfに書き出しておいたのだが、その手間は何だったのか。時間を返してくれ。まあ同じ環境が使えて、嬉しい気持ちの方が大きいけど。とっても軽いし、これもNisusと一緒でClassic時代よりもはるかに安定してそう。というわけでiLinerはしばらくお蔵入りになりそうです。
Thunderbirdメーラー):Classic時代に愛用したMusashiは申し訳程度にOS X版が準備されており、数日使ってみたのだが、マウスのホイールボタンが効かないという致命的欠陥のために、他を捜すことに。Netscape/Mozilla社は、アンチ・ゲイツな私としては、もとより嫌いなわけではない。使い心地は普通、シンプルなインターフェイスも可もなく不可もない。ただこのメーラーと心中しようと思った理由は、Windows OSとのシームレスな連動である。フォルダをコピーするだけで、メール本体から添付ファイルからアドレス帳から設定からすべてがMacからWindowsに移せるのだ。しかも両OSでメーラーインターフェイスもほぼそっくり。家ではMacだが外(大学)ではWindowsという私にはピッタリだ。バップアップ感覚でフォルダをUSBメモリ等に移しておけば、Windowsしかない出先でもメーラーを常に最新の状態に保てる。
・DEVONthink Pro(HD上のファイル・情報検索ソフト):Classic時代のUltraFindに変わるソフトがない、というのが長年私のOS X移行を妨げてきた理由でした(いやマジで)。Windowsでいえばサーチクロスですが、Macのソフトとなるとなかなか無いんです。OS Xでも真っ先にこの手のソフトをいろいろ探して、試してみました(GripGrop、SpotInside、EasyFind)。ところが、このDEVONthink Proを知ってびっくり。これUltraFindどころではないですよ。ほぼ全てのフォーマットの文書が読めますし、一万を超えるファイルでも瞬時に中の文字列を検索してくれます。このソフトはすべての研究者に必須→すべての研究者には今後もMacが必須、という倒錯した図式が私の頭のなかに芽生えてしまったくらい、感動しました。当初私がMac版が欲しいなあと考えていたサーチクロスよりも速度や柔軟性が段違いに優れています(これはソフトの長所というより、メタファイルの管理に長けているMac OSの特徴ですが)。
もっとも、インターネットの検索エンジンと機能がかぶる、この手の検索ソフトの将来性は微妙で、AppleMicrosoft検索エンジンをOSのなかに取り込んでしまおうとしています。Appleではファイル検索ソフトのSherlockがより進化してSpotlightになったわけですし、Window Vistaでも同様の強化された検索機能がつくそうです。Googleデスクトップに対する、反撃開始といったところでしょうか。インターネットがデスクトップを支配するか、デスクトップがインターネットを支配するか、見物です。

最後ちょっと話が逸れましたが、遅ればせながら、クラシックとおさらばした一マックユーザーの報告でした。
ただ、Mac雑誌などからプンプンにおってくる、Macコミュニティの相変わらずの「宗教くささ」には辟易しますが…。WWDCでのジョブズのパフォーマンスなどこちらはまったく関心ないし、これから出るOSに対して読者の熱狂を喚起しても意味ないと思うんですけど。それよりApple社はちゃんとサポートやってよ、せめてIBM/Lenovoくらいには。で、雑誌はちゃんとユーザー側の視点も入れて書いてちょうだい。あなた方が「OS Xへの移行済みユーザーがすでに75%」みたいなApple太鼓持ち記事書くから、Classicユーザーが追い込まれたわけだし、今回も「売り上げの七割以上がインテルマック」とAppleの発表を受け売りで書く(MacPeople誌だけど)だけじゃなくて、その暗部(G3のサポート打ち切り等)についても批判的に書いてちょうだい。むろん、さほど期待してはいませんけど。