私の一週間(7/10-7/16)

7月10日(月)
 本郷。わりと早くあがれたので、帰宅後、娘を連れてビールを買いがてら散歩。最近、選択肢が増えてきたので従来のエビス中心主義(エビサントリスム)を見直しつつあるところ。各社を買い込む。評判のプレミアムモルツサントリー)は口当たりも後味もよいのだが、飲み続けるとどこか物足りなく感じてならない。ビール版「上善水如」といったところか。ラガー(キリン)は長年ドライすぎて敬遠していたのだが、クラシックラガーとなるとなかなかバランスが取れていてよい。苦くて濃い。さすが高度経済成長を支えた味である(笑)。一方、発泡酒からは文字通り気の抜けた日本社会しか生まれないだろう。キリンといえば一人暮らしの頃はハートランドを瓶で買ってくるのが一番の贅沢だったと記憶するが、最近はあまり見かけないので疎遠である。高級志向といえば、ブラウマイスターも悪くない。キリンのビール売り上げは大手四社で一位のようだが、私も気付いたらそれに貢献していた。ただし、今晩はエビスを瓶で、と言われたら、それに勝てないのだが。ブランド力だけじゃないよな、エビス。

7月11日(火)
 多摩美、国立で講義。多摩美では前にも書いた聖心の心理学の学生が「アパシーにおけるジェンダー変数」についてのアンケート調査。「アンケートをやってへこみました」というコメントをくれた学生がけっこういたが、確かにネガティヴな心性を自覚させるようなアンケートはそういう面があるかも。アンケートのパフォーマティヴな効果は、心理学ではどう扱われているのだろうか? 国立は最終回だったので打ち上げ。これほどこちらが手抜きしないで存分に話せる学生達の飲み会も久しぶりだ。今日のヒットは「紙がツルツルしていて書き込めない教科書は文科省の愚民化策に違いない」説だ。これについては近々もっとちゃんと書きたい。

7月12日(水)
 本郷。早く帰ろうと思ったのだが、学生と意外な長話になり、帰ったら十一時過ぎ。きょうびの大学院生は色々と悩みが多いのだ。命ずるでも、距離を置くでもなしに、それとなく良い向きに方向付けなくてはならない、中間管理職の辛いところだ。

7月13日(木)
 聖心で期末テスト。この学校の学生は本当に文章力があるのだが、聞いたところ、付属高校では作文を重視しているらしい(もちろん全員が付属上がりではないのだが)。最近この大学の評価がとみに高い私としては、またもや「うーむ作文かー」と単純に納得。確かに文章は書けるけどパッパラパーという学生(社会人でもそうだが)にはあまりお目にかかったことはないし(物書きにはそれがいるわけだが)。国際化とかITとかいう前にやっぱり作文ですよ。紙と鉛筆さえあれば、大げさな機材や人材(外国人講師など)が無くてもできますよ、作文は。それで聖心クラスの学生の下地ができるのなら、かなりのコストパフォーマンスですよ。もちろんここで安易に「作文力」とかいうと誰かみたいに嘘臭くなるわけなのだが。授業後、雨が降ってきたのだが、走ってケーキ屋に寄って帰宅。さすがに広尾のケーキ屋は、神戸は御影育ちの嫁さんの舌も満足させたようです。まあこれが赤羽のケーキ屋なら、一個の値段で二個買えるし、しかもたまに一個サービスしてくれる(二個買ったら三個くれる等)のだが。ケーキは個数を綿密に計算して買うんだから一個オマケしてもらっても困る、という嫁さんの意見もごもっとも。どなたかお志のあるパテシィエさん、わが街赤羽に「普通の」ケーキ屋(非チェーン店)を!

7月14日(金)
 以前にやった胃の検診でポリープのようなものが見つかったから要精密検査との結果。がびーん。よく聞く話とはいえ、自分がそうなるとショックが大きい。一日気分がすぐれず。ゼミの後、新しく研究補佐をしてくれる方の面接。第一印象は、よし。その後、三年生が連休中、熊本の実家から母を東京に呼んだというので研究室で接待。ローカルな話がはずみ、よせばいいのに私が「オレのメンタル上の九州地図(馬鹿マップ)」をホワイトボードで披露。「これ以上は思いつかない」と首を捻っていたところに、「九州だからといってべつに県が九あるわけではないですよ」と救いの一声。大切な娘をこの学科に入れたことを激しく後悔していなければいいが。帰ったら『ワーグナー・フォーラム2006』が届いてました。「『ベックメッサー以前』のハンスリック──ワーグナーとの初期の関係」という少々本格的な論文を書きました。二割引きの著者割りがあるそうですので、ご希望の向きは一声かけてください。

7月15日(土)
 地元の胃腸科にいって血液検査をして胃の精密検査を申し込む。前の日に酒を飲まないという条件では意外に選べる日が少ないことが判明。満を持して来週の日曜に予約。午後から夕方にかけて、家のすぐ裏にある星美学園で園児向けの縁日を一般に開放しているとのことで、友人が入場券をくれたので、一緒に行く。星美は最近『東洋経済』の学校特集で、学力アップ度で全国二位になった注目校(絶対値は低いから偏差値的には大したことないのだが)。もっとも有名なOGは小渕優子センセ。幼稚園は、うちみたいに「近いから行かせる」という親と、「ぜひうちの子を星美に」というやる気満々の親(場所柄、埼玉から通わす親が多いのだが)の二傾向あるらしいが、嫁さんの情報によると総じて「お母さん同士のつき合いが大変」という噂。たしかにこの日も見目麗しく品のある奥さま方が(子供以上に)わたくしめの目をひきましたよ。児童館などはよく一緒に行くが、ああいうファミリー参加の学校行事(運動会的な)を見物したのは初めてだったので新鮮でした。少なくともあの場では、子供がいる家庭=裕福という図式はおおむね正しい気がした。それが星美だからなのか、こちらの過剰な劣等感 or 防御本能のゆえかは知らんが。いずれにせよ、幼稚園選択は親にとって最初の社会的イニシエーションの一つだ。やれやれ。もっと勉強しないと。それよりも、もっと仕事しないとな。

7月16日(日)
 新進のダンス批評家でカント哲学の精力的な読み手、木村覚くんの結婚パーティ。江ノ島の海の家を借り切ってのパーティで、案内をもらった時は奇を衒いすぎではと気を揉んだが、なかなかどうして、素晴らしい会でした。天気も思いの外良かったし。奥さんも研究室の後輩なので、同窓会みたいでした。