『近代ドイツのナショナル・アイデンティティと音楽』

今日、大学に博士論文を提出してきた。
タイトルは最終的に「近代ドイツのナショナル・アイデンティティと音楽──《音楽の国ドイツ》の表象をめぐる思想史的考察」というものになった。
全体で実に四百字換算で2,200枚。
【近代ドイツにおいては「ナショナルなもの」の理念それ自体が、音楽的想像力を媒介として構築された。《音楽の国ドイツ》という神話が形成されたのは、ドイツ人に優れた音楽的才能があったから、というよりむしろ、「ドイツ的なもの」と「音楽的なもの」がきわめて類似した美的理念(国境を超えるもの、眼には見えないもの、純粋に人間的なもの、民衆的なものなど)として語られてきた結果に他ならない。ドイツ人が音楽を作ってきた以上に、音楽という芸術が「ドイツ」なるものを作ってきたのである。】
という単純なことがらを思想史的に裏付けるために、A4にして400ページも費やしたわけだ。
まあいずれにせよ、これほど大部の原稿を一冊の書物のために書くことは、もう一生ないのではないか、という気がする。

今まで二年近く続けてきた「山籠もり生活」(自分的にはそうだったのです)を終えて、ようやく社会復帰できそうだ。(なお2004年は私の研究者生活で初めて、出版がずれ込んだものを除いた、実質業績ゼロの年(泣)であった。)
さて最初の課題は、某助教授が書いた博士論文の校閲だ。
博士号をまだ授与されていない私が、なぜ博士論文の校閲を、と思ったが、私のハンスリック論の幾つかを重要なポイントに使ってくれている、ということもあって、断るわけにいかなかった。何より、こちらの勉強になるし。なお、大学の規定により、一年以内に出版が義務、ということらしく、けっこう慌ただしい。その辺も大学によって違うのね。おそらく私の本より先に出ることだろう。

私の方は、これからしばらくは出版社回りの日々になりそうだ。といっても審査が終わるまでは何もする気になれないが。
出版関係の方も、そうでない方も、博士論文の内容に関心のある方はご一報下さい。
例えば、めちゃくちゃキャッチーな新書で、という方向でも積極的にのりますので。

その前にこのダイアリーの使い方覚えなくては。